あかりの日記

おっ あっ 生きてえなあ

立川武蔵『最澄と空海』①

草木また空に従ひて成す。まさに是れ衆生なるべし。(p172、『伝教大師全集』p183) 最澄と空海 日本仏教思想の誕生 (角川ソフィア文庫) 作者:立川 武蔵 KADOKAWA/角川学芸出版 Amazon 天台智顗に従って、諸法は実相であり一切の衆生は成仏すると説き、比叡山…

立川武蔵『空の思想史』⑤

空の思想史 原始仏教から日本近代へ (講談社学術文庫) 作者:立川 武蔵 講談社 Amazon さて、この本の話も今日で終わりにしようじゃないか。今日は11章から最後まで、東アジアに伝来した空思想を外観する。 東アジアへの仏教伝来概観 このテーマもまた、個…

立川武蔵『空の思想史』④

空の思想史 原始仏教から日本近代へ (講談社学術文庫) 作者:立川 武蔵 講談社 Amazon もうとっくに年も明けてしまった。本当はお正月にやろうと思ったんだけど、気づいたらもう1月も半分近く終わってる。ままええわ。 さて、前回は7章の、自性(スヴァバー…

立川武蔵『空の思想史』③

注:日記のサムネイルが本の表紙だととっつきにくいという意見を頂いたので、ブッダにしてみた。特に深い意味はない。 空の思想史 原始仏教から日本近代へ (講談社学術文庫) 作者:立川 武蔵 講談社 Amazon さて今日は、4章〜9章の、インド仏教における空思想…

立川武蔵『空の思想史』②

空の思想史 原始仏教から日本近代へ (講談社学術文庫) 作者:立川 武蔵 講談社 Amazon 今日は1章〜3章くらいまでをまとめることを目標としたい。 検討の対象 本書は空思想を検討するわけだが、検討対象をもうちょっと明確にしておく。空の思想というのは、…

立川武蔵『空の思想史』①

インド中観派の「空」の説明を核としつつ、各時代・各地域の仏教における「空」の理解を検討する。めちゃくちゃ興味深く、仏教についてもっと広く深く知りたくなるような本だった。 空の思想史 原始仏教から日本近代へ (講談社学術文庫) 作者:立川 武蔵 講談…

中村元訳『ブッダ最後の旅−大パリニッバーナ経−』

ブッダ最後の旅-大パリニッバーナ経 (岩波文庫) 作者:中村 元 岩波書店 Amazon 今週はゆっくりと休みが取れたので、お経を検討していきたい。(ダンマパダの方も書かなければならんのだが。) さて、このお経は原始仏典(パーリ三蔵長部収録の「マハーパリ…

中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』

ブッダの 真理のことば 感興のことば (岩波文庫) 作者:中村 元 岩波書店 Amazon 忙しく辛い週末だったが、なんとか一冊は読んだ。ただ読んだだけになってしまい、あんまり線をひいたりとかもしていないのだが、とりあえず読んだので、その事実だけでも記録し…

中村元『慈悲』

お慈悲ぃ・・・ 慈悲 (講談社学術文庫) 作者:中村 元 講談社 Amazon 我々の信じている仏教というのは慈悲の宗教である。観音や阿弥陀は現世で苦しみあえぐ我々を大悲の力で救済してくださる。一方で、色々と見てきたように、部派仏教、伝統的な仏教について…

笈川博一『物語 エルサレムの歴史ー旧約聖書以前からパレスチナ和平まで』③

物語 エルサレムの歴史 旧約聖書以前からパレスチナ和平まで (中公新書) 作者:笈川博一 中央公論新社 Amazon 第一次中東戦争 エジプト、ヨルダンをはじめとするアラブ連合側は、イスラエルに数では大きく優っていたが、各国間の統制が取れておらずイスラエル…

笈川博一『物語 エルサレムの歴史-旧約聖書以前からパレスチナ和平まで』②

物語 エルサレムの歴史―旧約聖書以前からパレスチナ和平まで (中公新書) 作者:笈川 博一 中央公論新社 Amazon 続きイクゾ ローマ、ビザンツ 2世紀の破壊の後にエルサレム市は荒廃したが、転機は4世紀に訪れる。コンスタンティヌス帝がキリスト教を公認した…

笈川博一『物語 エルサレムの歴史ー旧約聖書以前からパレスチナ和平まで』①

物語 エルサレムの歴史―旧約聖書以前からパレスチナ和平まで (中公新書) 作者:笈川 博一 中央公論新社 Amazon 「エルサレムの歴史」と題しているが、エルサレムだけというよりは、エルサレム市を軸にしつつ、パレスチナ/カナン*1全体の古代から現代までの歴…

中村元『原始仏典』

原始仏典 (ちくま学芸文庫) 作者:中村元 筑摩書房 Amazon 労働が忙しくて、なかなか本を読む時間が取れないぞ。とはいっても、無限の時間があったらあったで、その分こういう用でもない*1モノを読んだりするかと言われると怪しいんだよな。ある程度時間が貴…

中村元、三枝充悳 『バウッダ[佛教]』③

バウッダ[佛教] (講談社学術文庫) 作者:中村 元,三枝 充悳 講談社 Amazon 大乗の経典及び教えとして一般的に言われているものをこの本の順番に従って概観していく。もちろん僕は(法華経の一部と般若心経を除いて)読んだことがないので、こんな感じらしい、…

中村元、三枝充悳 『バウッダ[佛教]』②

バウッダ[佛教] (講談社学術文庫) 作者:中村 元,三枝 充悳 講談社 Amazon 労働が忙しくて、読んでからだいぶ日が空いてしまい、記憶からかなり抜けてしまった。悲しいなあ。しかしながら、釈尊の述べるニッバーナ、悟りというのは、そもそも、釈尊自身の言い…

中村元、三枝充悳 『バウッダ[佛教]』①

明らけく のちの仏の 御世までも 光りつたへよ 法(のり)のともしび –伝教大師最澄*1 バウッダ[佛教] (講談社学術文庫) 作者:中村 元,三枝 充悳 講談社 Amazon 釈尊の説いた教えから、はるばる日本やチベットにまで伝わった教えに至るまでの仏教全体の通史…

性欲とは神が与えし大罪 ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(中)(新潮文庫)

逃れられるカルマ。(アリョーシャ) ああ逃れられない!(ミーチャ) カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫) 作者:ドストエフスキー 新潮社 Amazon 上巻 https://akariakaza.hatenablog.com/entry/2023/07/29/143352 さて中巻だが、まず、ゾシマ長老が亡くなる。…

石井米雄『タイ仏教入門』

マイペンライ。 タイ仏教入門 (めこん選書 1) 作者:石井 米雄 めこん Amazon タイシリーズ第2弾。 短くて少し古い本だが、かなり興味深い内容だった。 仏教とは 初期の仏教の概要についてはこっちの本参照(僕の感想は書きかけだが)。 akariakaza.hatenabl…

柿崎一郎『物語 タイの歴史 微笑みの国の真実』

サワッディーカッ。 物語 タイの歴史 微笑みの国の真実 (中公新書) 作者:柿崎一郎 中央公論新社 Amazon 今度旅行でタイに行くので読んでみた。 中公新書のこの各国史シリーズが結構いいんですわ。おそらく内容は、各国の中学校の教科書をさらに簡潔にした程…

神なんか必要ねえんだよ ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(上)(新潮文庫)

俺の大事な神が!(アリョーシャ) カラマーゾフの兄弟(上)(新潮文庫) 作者:ドストエフスキー 新潮社 Amazon 僕がこれを読むのは初めてじゃなくて、何年か前、学生の頃に途中まで、確か長老が死んで死体が腐るあたりまでは読んだ(当時読んだのは光文社の…

ソーニャちゃん助けて ドストエフスキー 『罪と罰』(下)(新潮文庫)

こっちのソーニャちゃんは人殺しとかは絶対しない。 罪と罰(下)(新潮文庫) 作者:ドストエフスキー 新潮社 Amazon 「俺は『罪と罰』を読んだことがあるんだぞ。」 この一言が言いたいがためだけに、僕は5年くらい前に買ったのだ。というより、どちらかと…

ドストエフスキー 『罪と罰』(上)(新潮文庫)

の話は…しません(タイトル詐欺) 罪と罰(上)(新潮文庫) 作者:ドストエフスキー 新潮社 Amazon 感想は下巻まで読んだら書くことにして、今日は全然違う話をメモしておく。 僕は本というのは、本屋で買うのがいいと思う。積ん読でも買うのはよい。電子書籍…

高橋源一郎『さようなら、ギャングたち』

少し前に読んだ本。 さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫) 作者:高橋源一郎 講談社 Amazon この本の巻末には、「身体・職業等に関する表現で不適切と思われる箇所がある」との断り書きがある。この作品のある部分は、「不適切な表現」で構成されている…

びっくりするほどユートピア E.H.カー『危機の二十年−理想と現実』

まず全裸になり、 …ではなく。 危機の二十年-理想と現実 (岩波文庫) 作者:E.H.カー,原 彬久 岩波書店 Amazon 学生の頃、世間的にもほんの少しだけ名の知れた学者の先生の国際政治の授業を受けていたことがある*1。その教授は授業でいろんな本の話をしてい…

中村元『ブッダ伝』

中村元先生による原始仏教の入門書 ブッダ伝 生涯と思想 (角川ソフィア文庫) 作者:中村 元 KADOKAWA Amazon 仏教というのは、生をくるしみと定義して、その積極的な意味を否定するところから出発しているのだと思っていた。輪廻とか無常とかそういうのを字面…

向田邦子『隣りの女』

だんだん空気がヌルくなってきたなあ。 新装版 隣りの女 (文春文庫) 作者:向田 邦子 文藝春秋 Amazon と、思っていたら、急にまた寒くなった。 よかったよかった、春はまだまだ遠いみたいだ。 でも油断しちゃダメだ、日は長くなってきているし、それに、伊豆…

日本には妙好人がいるぞ 鈴木大拙『日本的霊性』②

①の続き。 日本的霊性 (岩波文庫) 作者:鈴木 大拙,篠田 英雄 岩波書店 Amazon 日本的霊性は「男性性」である? 著者は、日本的霊性が大地性を有し、武士のものであるというと同時に、男性的なものであるともいう。だけど、はっきり言ってこの議論は結構問題…

讃えよ大地を 鈴木大拙『日本的霊性』①

『日本的霊性』鈴木大拙 読んだ。 日本的霊性 (岩波文庫) 作者:鈴木 大拙,篠田 英雄 岩波書店 Amazon 浄土系の基本的理解 この本の話に入る前に、僕の浄土系思想の基本的な認識を書いておく。あくまで僕の認識です。おかしなことを言っていたら指摘してくだ…

V・E・フランクル『夜と霧 新版』 読んだ

心理学者である著者は、ユダヤ人として強制収容所に入れられる。本書は、収容所での過酷な体験にさらされた人間の心を心理学者として分析したものだ。とくに、過酷な環境で希望を失わないためには、人生の目的を見失うなということが繰り返し説かれる。 割と…