あかりの日記

おっ あっ 生きてえなあ

お絵描き

 

いやおれね、諸般の事情でイギリスに住まわされてるんだが、とにかく暇なんだよ。色んなとこ出かけたりしてるけど、まだ時間が有り余ってるんだ。参った参った。

だもんで、地元のお絵描き教室に通ってみているのだ。全く未経験だけど、前から習ってみたかったし、英語の勉強にもなるかなと思って。

で、これが結構いいんだよな。veryvery地元の人と友達になれる。留学とか駐在とかしても、地元民と仲良くなるって意外と難しくないか?お絵描き教室はよいぞ。その上、おれのとこはなぜか先生が床屋やってるから、授業に行くと床屋の予約もできちゃう。

 

まあ絵の方は全くヘタクソで人に見せるようなものではないが、供養のために載せてみよう。

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富士山

 

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ブログのアイコンの蓮。ちなみに薬師寺の蓮である。

背景何描いてるかわかんなくなっちゃったけどもうこれでいいや

 

なんというか、こんなことばかりしていていいのか、日々不安ではある。だけどまあ、他にやることもないからしょうがない。今やるべきことはこの国でsomething specialを見つけることだろう。そう思うようにしているぜ。まったく、参った参った。

 

The Odessey

ノーラン監督のオデュッセイア。

おれはニワカだが、好きな映画を聞かれたらダークナイトって答えてる。そのダークナイトのノーラン監督。

テレマコス役はトムホランド。MJのゼンデイヤも出てたし、あとパニッシャーの人もいたよね?ほとんどスパイダーマンじゃん。おれハリウッド映画には詳しくないんだがこういうもんなんかね。

古代の叙事詩というより終始重苦しい人間ドラマって感じだった。巨人とかセイレーンとかよりも、長い航海で疲弊していくおじさん達の描写がリアルで怖い。

バトルシーンはダークナイトをほうふつとさせるスペクタクル。お金かかってるね。

普通に現代語でしゃべってたり、オデュッセウスがトロイア戦争で一般人を殺してトラウマになってる、という若干現代的な倫理観が入ってきたりしてたけど、まあそのくらいは大河ドラマとかでもあるから目くじら立てるほどじゃないな。

 

帰宅

最近とみに気づいたんだが、この世の中には案外面白いものがいっぱいあるな。

思い返すと、物心ついたハイティーンくらいからのおれにとって世の中とはおれを義務で縛りつける地下牢みたいなものだった。まあ今でも、おれをとりまく現在・現実の世界や社会がそうであるという感覚に変わりはない。それはこれからもずっとそうだろうし、おれはこれからも模範囚であり続けるだろう。しかし一方でおれは、この牢屋の中の至るところに、人類が長ーい時間をかけてやってきた営為の痕跡がきらきらと光っていることを発見した。仏像、アビダルマ、中観、唯識、教会、西洋美術。人の営為という事実がぱんぱんに詰まっている。鉄格子のかすり傷みたいに何の意味もないが、面白い。おれを含む人類一人一人が何百年何千年と続けてきた生活すなわち義務の履行が、この面白いものを蓄積してきたとしたら、非常に納得のいくものだ。

最近は暇なのでこういうことをずっと考えている。あんまりやりすぎると現実に戻れなくなるな(笑)参った参った。

義務 - あかりの日記

ちかしつぐらし - あかりの日記

イギリス古寺巡礼⑤グロスター大聖堂

イングランド中部、コッツウォルズ地方のグロスター。英国屈指の大聖堂を見に行こう

 

グロスター大聖堂

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7世紀くらいの修道院を起源として、11世紀のノルマン時代から15世紀末頃にかけて段階的に作られたらしい。

Nave。明確に、手前がゴシックで途中からロマネスク(ノルマン)に切り替わってるよね。

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これこれ。天井だけでなくアーチの様式も違ってわかりやすい。窓も小さい。

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この南翼は垂直ゴシックperpendicular gothicの最も古い作例らしい。イギリスゴシックの様式はカンタベリーの記事も参照。

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Quire。

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複雑に凝ったヴォールトが印象的。

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Great East Window。
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英国最大級のステンドグラスのようだ。ヘンリ8世の宗教改革の際、デザインが変更されたにもかかわらず、てっぺんにはローマ教皇がいる!これは、「高すぎてプロテスタントの手が届かなかった」かららしい(ホントか?w)

 

聖母のチャペル

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空間が明るくて驚いた。壁のほとんどが細い垂直線で仕切られた窓である。まさに「垂直」ゴシックというのに相応しい。

 

Cloister
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扇状のヴォールト天井(fan vault)が美しい。ハリーポッターのロケ地になったらしいが、おれはニワカなのであまりよくわからん。

 

種痘を発明したジェンナーはグロスターのお医者さん。

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プランタジネット朝6代目、エドワード2世の墓。

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先代のエドワード長脛王が有能扱いなのに対して、エドワード2世の評価は低い。幼馴染ギャヴィストンを寵愛して貴族の反感を買い、王妃のクーデターで実権を失い、議会に廃位される。軟禁された後に暗殺される。Wikiによると尻に熱々の火箸を差し込まれて殺されたらしい。残酷スギィ

 

このステンドグラスは、プランタジネット朝4代目、ヘンリ3世の戴冠式だ。

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征服王ウィリアム1世以降、英国王はほぼ必ずウェストミンスター大聖堂で戴冠したが、ヘンリ2世だけは例外的にここグロスターで冠を戴いた。

欠地王ジョンの急死により、1216年、9歳で突然即位することになったヘンリ。フランスの侵攻もあり、グロスターで取り急ぎ戴冠式を敢行。王冠もないので、しょぼい金の輪っこを代用した。

ヘンリ3世はその後、大陸進出を推し進めて議会と対立し、ついにシモンドモンフォールの反乱に至る。このヘンリ3世の大陸進出へのこだわりには、戴冠の経緯のコンプレックスも多少は影響してるんじゃないか?*1

 

 

グロスター博物館

名画はあまりなかった。19世紀のグロスター。

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ローマの道祖神みたいなやつ

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ローマによりグロスターが建設されたのが紀元後90年代。五賢帝の最初・ネルウァ帝の時代らしい。

ピューリタン革命時の武器とか

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グロスターはピューリタン革命時、当初優勢だった国王派に包囲されるも持ち堪え、そのことが戦局を議会派有利に転換させたらしい。

ジョージ3世の国章

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ジョージ3世の治世は七年戦争で勝ち、アメリカ独立戦争で負け、ナポレオン戦争で勝ち、と激動の時代だった。彼自身が遺伝病に悩まされたこともあり、国政の主導権は議会が握るようになった。

 

街歩き

カテドラルへのpath。風情があるねえ

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お散歩日和。
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お兄さんに珍しく声をかけられたので、what are you up toと聞いたら宗教勧誘だった。おれはBuddhistだと言って逃げた。あながち間違いではあるまい

 

街の中に急に立派な廃墟が現れる。Greyfriarsという修道院跡らしい。アーチの形からゴシックとわかる。やはりヘンリ8世のdissolutionで解体されたようだ。

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この壁の裏でおっさんが立ちションしていた。

 

先述のネルウァ帝の像
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散歩にちょうどいい港。
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グロスターと韓国の関係。

朝鮮戦争のおり、イムジン河の戦いでグロスターの部隊が活躍したことを記念して、グロスターの丘と名付けられた場所があるらしい。
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まさかイギリスの田舎でイムジン河というワードを見るとはねえ。

イムジン河水清く〜滔々と流る〜
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水鳥自由に群がり飛び交うよ〜
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我が祖国東の地〜

 

はあ。イギリスまで来てなにをプラプラしてんだろうなおれは。参った参った。

まあいっか。人生の夏休みだ。

 

*1:神器なしで即位した後鳥羽上皇とちょっと似てるような気がする。時代も被ってるし。

イギリス古寺巡礼④バーミンガム大聖堂と鉄橋とラファエル前派

アイアンブリッジ

イギリス第2の都市・バーミンガムから西に30マイルの田舎に、このような鉄橋がかかっている。

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まあただの鉄橋なんだが、世界で初めて造られた鉄橋で、世界遺産なのだ。

橋をよく見ると、

This bridge was cast at Coalbrool=Dale and erected in the year MDCCLXXIX

と書いてあるね。

 

 

ではここで、ローマ数字を読んでみましょう。

イギリスを回っていると、美術館とかでローマ数字を見るんだよな。絵の額縁の年号の表記とかね。意外と単純だから、この機会に読み方を覚えてしまおう。

 ①M=1000、D=500、C=100、L=50、X=10、V=5、I=1

 ②大→小の並びなら足し算

 ③小→大の並びなら引き算(IはV、Xの前だけ、XはL、Cの前だけ、CはM、Dの前だけ)

 ④同じ文字を4つ並べちゃダメ

基本ルールはこの4つだけ。これで全部読めるし書ける。

MMXXVI→2026

MCMXLV→1945

MMCXII→2112

とかね。

Mまでだと3999までしか表せないじゃないかって?ローマ数字は年号とドラクエでしか使わないから、Mまで覚えときゃ十分なのだ。

 

 

閑話休題。ということで、この橋はMDCCLXXIXつまり1779年に造られた。コークス製鉄法を発明したエイブラハム・ダービー1世という人の子孫の、エイブラハム・ダービー3世が出資して造ったらしい。

この橋の架かっている峡谷は鉄鉱石の産地で、この周辺は産業革命時代に製鉄業の中心となった。資材の輸送効率を上げるために、この鉄橋が架けられたそうだ。

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現在は車は通れないが、人は歩いて渡れる。

 

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昔の料金所の中がちょっとした博物館になっている。

 

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付近にあるアイアンブリッジ峡谷博物館というところに行ってみたが、休館中であった。参った参った。

 

バーミンガム

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バーミンガム駅のOzzy牛。バーミンガム出身の有名人と言ったらOzzyらしい。

 

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モダニズム建築のバーミンガム図書館。

 

バーミンガム大聖堂

街の真ん中の大聖堂。

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まずこのファサードを見てほしい。塔の部分の内側にぐわっと湾曲した形、時計や横の窓の楕円形。これらは典型的なバロック建築の特徴だ。

この聖堂は、18世紀前半にトーマスアーチャーという建築家が、有名なイタリアのバロック建築家ボッロミーニの建築を参考に建てたものらしい。イギリスにもバロックがあるんだね。

 

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内装。正直内装のバロックっぽさはおれにはよくわからんが、柱や梁がむき出しのゴシックとは全然別物だ。アーチも尖ってない。

 

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そして、このステンドグラスは、ラファエル前派ブラザーズの1人、エドワード・バーン・ジョーンズの作品だ。バーミンガムはラファエル前派の活動拠点の1つだったようだ。

 

バーミンガム美術館

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ラファエル前派

というわけで、ラファエル前派を中心に展示しているバーミンガム美術館に行って、ラファエル前派を軽く勉強してみよう。

 

ラファエル前派Pre-Raphaelite Brotherhoodとは、19世紀半ばのヴィクトリア時代、ロセッティという画家が中心になって結成した芸術家集団である。主要メンバーはミレイハント

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ハント、ロセッティの肖像

 

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レスリー、ミレイの肖像(National Portrait Garelly所蔵。バーミンガム美術館以外の作品は所蔵先を書く。*1

しかして、ラファエロの前、ってのは、どういう意味なのだろうか。17世紀にルイ14世がつくったフランス美術アカデミーはラファエロの人物表現を芸術の模範とし、18世紀に設立されたイギリスのアカデミーもこれに倣った。要するに、「アカデミズム絵画」といわれるものは、ある意味では「ラファエロっぽく描く」作風だともいい得るのだ。少なくともロセッティらはそう捉えた。

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ラファエロ、アンシデイの聖母(National Gallery所蔵)

 

その上で、ロセッティらは、アカデミズムの潮流に縛られた絵画様式に対抗意識をもち、ラファエロより前、すなわち、初期ルネサンスやフランドル派らへんの時代の絵を参考にすべきだ、と提唱したのである。これがラファエル前派という言葉の意味である。

つまり、ラファエル前派というのは、19世紀に色々出てきたアカデミズムへの対抗運動の1つと捉えればよいだろう。美術の教科書だと、象徴主義の一分野として載っていることが多いと思う。

前も言ったけど、正統派への対抗馬ってのは、そもそもちゃんとした正統派の権威がないと生まれない。イギリスでこういうのが出てきたのは、18世紀後半のアカデミーがちゃんと成功して、イギリスにアカデミズム絵画が浸透したからなのであろう。

↓イギリスのアカデミズムの一例

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ゲインズバラ、朝の散歩(National Gallery所蔵)

↓フランスのアカデミズムの一例
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ドラローシュ、レディジェーングレイの処刑(National Gallery所蔵)

 

ラファエル前派の作風としては、色彩の鮮やかさ、細部を緻密に描くこだわり、イギリス古典を題材にするというロマン主義っぽさなどがある。細密描写はフランドル派を意識しているのかな。あと、風景描写に力を入れており、戸外制作に取り組んだ者もいたようだ。1850年代とかにやってるわけだから、印象派より先だったんだな。

 

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ミレイ、The Blind Girl 鮮明な風景描写。虹が2本あるけど、左の奴の色の並びがおかしいと指摘されて右の奴を書き直したらしい。


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ロセッティ、ベアタ・ベアトリクス。ダンテの戯曲が画題で、モデルは亡き妻。死のシーンらしい。アトリビュートがいっぱいあるが1つ1つの意味はおれにはわからない。背景はベネチアの街並み。

 

ちなみにベアタ・ベアトリクスは複数の版がある。↑はTate Britain所蔵。こっちの方が色が暗いが、画題にはこのくらいの暗さの方がマッチしているかもね。


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ロセッティ、La Donna della Finesta。遺作、制作途中。

 

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ハント、ヴェロナの紳士。非常に鮮やかな風景はやはり戸外製作。モデルは友達を使用。

 

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アーサーヒューズ、The Long Engagement。戸外制作。気候や虫とかに悩まされながらなんとか作り上げたらしい。

 

ミレイ、オフィーリア(Tate Britain所蔵)。風景とかドレスの模様とか、細部の力の入り具合がすごいな。英国古典を題材にするというロマン主義要素もあり。

ハムレットの話→シェイクスピア『ハムレット』(野島秀勝訳) - あかりの日記

女友達を風呂に浮かべてモデルにしていたら風邪をひいちゃった、という有名なエピソードがある。その女は後にロセッティと結婚し、べアタ・ベアトリクスのモデルにもなった。なんか人間関係がドロドロでヤダなあ

 

ロセッティ、プロセルピナ(Tate Britain所蔵)。ローマ神話の女神。

 

ロセッティ、受胎告知(Tate Britain所蔵)。神話や聖書の画題が多いのもラファエル前派の特徴といえる。ガブリエルと聖母マリアの静謐な表情。

 

ラファエル前派同盟自体は、ミレイのアカデミー準会員への選任と女がらみの揉め事で比較的短命に終わる。だが、前述したジョーンズやアーツ・アンド・クラフツでも有名なウィリアム・モリスなどがこの動きに賛同し(第二世代といわれる)、さらに世紀の後半にはウォーターハウスなどのフォロワーが現れた(第三世代といわれる)。

ジョーンズ、フィリスとデモフーン。こちらは水彩画。ギリシャ神話画題。男性ヌードとか女が男を誑かしてるとかが当時はNGだったらしく、水彩画展示会で酷評されたらしい。

 

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ウォーターハウス、シャロットの女(Tate Britain所蔵)。外の世界を見ると死ぬ呪いにかかったシャロットが、ランスロットっていうかっこいい騎士に惚れて外の世界を見ちゃって死んじゃう。みたいな話。多分。タペストリーなどを含めた細密描写はラファエル前派イズムを濃く受け継いでいるが、全体的な構成もおろそかにしていない。

ラファエル前派。全体としてややつかみどころがないような気もするが、アカデミズムへの対抗という潮流を作った重要な一派だったといえるだろう。

 

その他の展示物

植民地からの略奪品コーナー。

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6~7c、スルタンガーンジーのブッダ。インドのブロンズ像の中では現存最大級のものらしい。指も含めて欠損がなく、状態がよくて素晴らしい。んだが、客がやたらベタベタ触ってんのがかなり気になった。こっちでは仏像のおさわりはOKなのか?

 

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11c。simhanada lokeshvara「世自在王仏」の像。阿弥陀さんの法蔵比丘時代のお師匠さん。ガンジス沿いの遺跡で発掘。なかなか見ないポーズなのでヒンドゥーの神像かと思ったが、こういう仏像もあるのね。いつかインド行ってみてえなあ

 

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パキスタン

 

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フィジー

 

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この博物館には帝国主義時代の美術品蒐集に対する反省が随所にみられる。確かに美術品のレパトリには色々問題はあるんだよ。ある程度は先進国の大都市でまとめて見られる方がいいんじゃないか、とか、返したらちゃんと保存してくれるのか、とか。

 

オジー追悼コーナー。

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上の絵、ブリジットライリー。錯視を引き起こすOp Artというやつだ。60年代。

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抽象表現主義、minimal art、op art...戦後も芸術様式の展開は続いていて、美術の教科書では、あたかも新古典主義やら印象派やらとつながる系譜の末裔のように紹介されている。だが、おれは、芸術の中心がアメリカに移って、様式の呼び方が"~ism"から"~art"に切り替わったあたりに、なにか大きな断絶があると感じている。それは単純な「現代アート」という括りともまたちょっと違う気がするんだよな。デュシャンの便器とかはまだ旧時代のものってイメージなんだよ。だが、今のおれには、この違いの感覚を説明できるほどに現代アートの知識がない。参った参った。

 

Stafford Hoardという、Heptarchyの一つMercia時代の金貨とかが発掘されたらしい。

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バーミンガムの歴史。中世に交易都市として発展した後、産業革命の時代になると、付近の製鉄業の発展に伴い金属加工業が盛んに。ボタンとか銃とかが特産品だったらしい。

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バーミンガム。観光ならサクっと回れる。みんなも暇なら行ってみよう。

 

*1:Tate Britain、National Gallery、National Portrait Galleryなども既に何度か行ったので、記事を書きたいのだが、ちゃんと書くとめちゃくちゃ長くなるので着手できていない。しばらくは地方のちっちゃい美術館巡りで勘弁されたい。

Spider-Man Brand New Day

あんまりおれは流行りものの映画とか観ないんだけど、話題づくりのために観た。

世の中の人間は、映画とかドラマとかスポーツとか、話題のために観てるんだな(今更)。

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・ドクターストレンジの魔法でみんなに忘れられ、スパイダーマンという概念と化したピーター。4年間、誰とも関わらずに町を救う。心の慰めはAIとのチャットとMJのインスタのストーキング。そんな中、精神を乗っ取るタイプのヴィラン、ジーングレイの登場に苦戦し、さらにMJの新しい彼氏を見て精神崩壊。

MJやネッドの記憶は戻るのか?ジーングレイの追うVMaxとは何なのか?ピーターはネットストーカーを脱却して、もう一度リアルの人間関係を構築できるのか?

 

・ヒーローだからこその苦悩、のようなヒューマンドラマに焦点が当たっていてよかったと思います。おれは心が枯れているから、人の死で感動させる系のやつでは泣けないが。

・おれはアメコミの知識が全くないから、「あの作品のキャラじゃん!」の楽しみ方ができなくて残念だ。

・トムホランドってイギリス人なんだな。作中ではアメリカ英語だったから気づかなかった。イギリス人はアメリカ英語も喋れるんだね。それとも、本場のアメリカ人が聞いたら、エセ関西弁みたいな違和感があるのかな。

・今年中にアベンジャーズの続きもやるらしい。今度はMCUをちゃんと予習して観に行ってみるか。

以上。

 

イギリス古寺巡礼③コヴェントリー大聖堂

ゴディバ夫人の町、コヴェントリーは、中部イングランドではまあまあ大きい町だ。大都市バーミンガムのすぐ隣である。

 

略史

コヴェントリーはアングロサクソン時代から中部イングランドの中心都市の1つだった。

11世紀、デーン朝のカヌート王の時代、この地のマーシア伯レオフリックという領主は、イングランド有数の実力者だった。レオフリックはカヌート亡き後の王位継承問題に精力的に介入し、エドワード証聖王の即位によるウェセックス朝の復興を積極的に支持した。

ゴディバ夫人はこのレオフリックの妻。有名な逸話は後述する。

19世紀には、自転車の製造をはじめとする工業が盛んになり、多くの工場が建った。そのため、第2次世界大戦時にはドイツの空爆の標的になり、コヴェントリー大聖堂を含む市内に大きな被害が出た。

 

コヴェントリー大聖堂

もともとコヴェントリーには、①レオフリックが建てた修道院をノルマン時代に増築した聖堂があり、16世紀まで使われていたらしい。しかしこの聖堂①は(この日記ではおなじみの)ヘンリ8世の宗教改革の際に破却され、現在は遺構だけが残っている。

聖堂①の遺構。

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後述するハーバート博物館にも聖堂①の残骸が展示されている。

 

さて、これとは別に、14世紀後半くらい、②垂直ゴシック期に建てられた聖堂があり、これが宗教改革を生き残って存続した。しかし、前述のとおり、この聖堂②はナチスの爆撃で塔を残して倒壊してしまう。
現在は、聖堂②は爆撃後の状態をそのまま残し、そのすぐ横に新しい聖堂③を建てている。

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聖堂②の遺構。塔の上にフライングバットレス。いたるところにぽこぽこ角が生えていることなどからも、往時のイカツいゴシックの姿が偲ばれる。

聖堂②の地下には無料の博物館がある。コヴェントリー爆撃の解説ムービーや、当時人々が使っていた日用品などの展示などがある。こいつは興味深いぜ

1940年の大晦日の新聞

ジョージ6世とエリザベス王女。爆撃の直後にコヴェントリーを訪問したらしい

一家に一台ガスマスク

ガスマスクのつけ方のポスター。町中に貼ってあったのかな。

イギリスはとにかくこーいうのがタダですばらしい。だが、だいたい入口で寄付を懇願している。募金せびるくらいならちったあ入館料取ってもいいのに、と思わんでもないが、そこは多分、「教養は万人に開かれているべき」みたいなポリシーがあるんだろう。(まず教養より飯を安くしてほしいけどな。)

 

さて、現存する聖堂③である。こちらはモダニズムに振り切った建築で大変面白い。

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左が聖堂②、右が聖堂③。

 

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Nave。これまでに訪れた教会とはかなり毛色が違ってびっくり。

でもさ、よく見ると、この柱や天井、ゴシックの交差ヴォールトっぽさを意識してるよね。この木が生い茂ってるみたいな感じ。

 

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壁一面の窓や抽象性というモダニズムっぽさと、縦線がいっぱい入ったステンドグラスという垂直ゴシックっぽさの融合(?ニワカの感想です違ってたらすみません)

 

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Quire。画面右のオルガンにおっさんが1人座っているが、この人の生演奏がずっと流れていた。

 

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教会の建物に加えて、内装の面でも、現代アートがたくさん飾られていた。壊れちゃった古いものはそのまんま残して、新しい方は徹底的に新しくする。コンセプトが明確でいいですねえ。


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スタッフのおばちゃんスタンプ押すのヘタクソすぎんか。まあいっか

ハーバート美術館

教会のすぐ横にある美術館。

なんといっても目玉はゴディバ夫人。

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John Collier、19世紀末。

ゴディバ夫人は前述のとおりマーシア伯レオフリックの妻。以下の有名な逸話がある。

 

レオフリックはコヴェントリーの民に重税を課しており、夫人が何度諫めても聞かなかった。ある日レオフリックは、夫人に、コヴェントリーの端から端まで裸で渡ったら言うことを聞いてやるよ、と言った。夫人は、やってやりましょうということで、全裸になり、長い髪で体を隠して馬に乗った。民衆は夫人への恩義から誰も見ようとせず、夫人はついに町の端から端まで歩いた。このことで、レオフリックは根負けし、民を重税から解放した。めでたしめでたし。

…だが、実は、一人だけ、トムという男が夫人の裸をのぞき見していた。このことから、イギリスではのぞき魔のことをpeeping Tom(のぞき見トム)というようになった。

 

と、こんな感じである。ウィキペディアによるとこの逸話が史実ではないことは確定しているらしい。

この話はよく画題に選ばれている。上のコリアの絵はラファエル前派。ハムレットとかアーサー王とか、「イギリスローカルのネタ」を好むのがラファエル前派の特徴の1つだと思ってる。

 

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Adam van Noort、1586年。

光の反射で見えにくいけど、右上にピーピングトムがいる。

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これこれ。


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ゴディバ夫人のぞき見体験。


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実写映画。

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 Edmund Leighton、1892年。

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ピーピングトム像。こいつも人気キャラなんだな。

 

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(以下余談)

ところで。あんまり掘り下げないほうがいいのかもしれないけどさ、ゴディバ夫人の話が史実じゃなくて、単なる伝説なんだとしたら、なんでこんな話が生まれたんだろうな?

それを考えると、やはり、かなり純度の高いエロ目的ではないかと思うのだ。エロの中でも、なんていうのかな、ギリシャ神話みたいな明るいエロではなくて、現代風に言うなら「尊厳破壊」というか、高潔な女性を辱めるみたいな、ジメっと暗いエロを感じる。別にそれがよくないとかいいたいわけじゃなくて、単に分析しているだけなので、念のため。

 

そんでさあ(すまん、この話もう少しだけ続けさせてくれ。)、これと割と似てるのが日本にもあると思うんだよ。それが、光明皇后のサウナの伝説。

光明皇后は聖武天皇の妃で、仏教の信仰に篤かった。興福寺の阿修羅などは光明子の発願で作られたという。その皇后に、大要、このような伝説がある。

光明子は、民の病気を治すため、蒸し風呂を造って、1000人の民の垢を自分で摺ると誓願した。999人の垢を摺って、1000人目に、全身に膿が溜まったハンセン病の患者が来た。患者は皇后に、自らの膿を吸い出すことを求めた。皇后は流石にためらったが、自らの誓願を思い出し、患者の膿を1つ1つ丁寧に口で吸い出した。最後の膿を吸い出すと、患者は仏の姿に変わった。

詳しく知りたい人は和辻哲郎の古寺巡礼を読んでくれ。

で、この話もさ、初めて聞いたとき、ゴディバ夫人と同種の尊厳破壊というか、この話を作った人のジメっとした性欲を感じたわけさ。特に、「夫人の民衆に対する献身」という、それっぽいテーマらしきもので、エロ目的をオブラートに包み隠そうとしている辺りがそっくりじゃなかろうか。なお、ハンセン病患者の方が穢れてるとかそういうことを言いたいわけでは全くない。

 

特に結論とかはなく、ゴディバ夫人と光明皇后のサウナの話が似ている!という発見を報告したかっただけです。すみませんでした。

(余談終わり)

 

ゴディバコーナーの隣には戦争コーナーがある。

1942年のスターリングラードからコヴェントリーに送られた交換書簡↓

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連合国の空襲で破壊されたドレスデンの遺品↓

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ドレスデン空襲は連合国側による非戦闘員への大規模な攻撃としてその当否について議論されているらしい。ヨーロッパ版の原爆みたいなイベントなんですかね。

コヴェントリーは同じく戦争で破壊された都市と姉妹都市関係を結んで提携しているらしい。ヴォルゴグラード(旧スターリングラード)や空襲で破壊されたドレスデンなど。東側の旧ソ連や、まさにコヴェントリーを破壊した張本人であるドイツの都市と提携するあたり、強く平和を志向する意思を感じる。

 

2階はいつものオールドマスターズ。

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後期バロック時代、ルカジョルダーノのバッカスとアリアドネ。

 

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の横の部屋に、コヴェントリーJKの描いたヒロアカのファンアート。こういうオタク女子のカルチャーって今や世界中に浸透したんだな。

 

1階には産業遺産が展示されている。

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コヴェントリーはもともと繊維業が盛んで、産業革命直後はリボンを作っていた。

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しかし、安い輸入品の流入でリボン産業が衰退し、自転車等に切り替えた。

 

町の中心の広場には、冒頭に掲載したゴディバ像の他、ゴディバ時計がある。

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普段はこんな感じだが、毎時ごとに

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こんな感じでゴディバ夫人が出てきて、トムがのぞき見する。うーんエッチだねえ。そうでもないか。

 

コヴェントリー。地球の歩き方にも載ってない小さい町なので、1日あれば十分回れる。だが、それなりに見るものはある。おれは行けなかったが交通博物館もある。おまえらも、イギリスでどうしてもやることがなくなったら行ってみるのがよかろう。