調査嘱託の嘱託先は、裁判所に対して公法上の回答義務を負うとされる。もっとも、文書提出命令等と異なり、回答を拒絶した場合の不利益は法定されていない。
この点につき、「調査嘱託を受けた者が,回答を求められた事項について回答すべき義務があるにもかかわらず,故意または過失により当該義務に違反して回答しないため,調査嘱託の職権発動を求めた訴訟当事者の権利または利益を違法に侵害して財産的損害を被らせたと評価できる場合には,不法行為が成立する場合もあると解するのが相当である」とした裁判例がある。(東京高裁平成24年10月24日)
この判示は、調査嘱託の不回答が直ちに不法行為になるといっているのではなく、それが不法行為の要件を満たす場合には不法行為になる、という当たり前のことを言っているだけにすぎないようにみえる。どういうとき不法行為になるのかは、個別の事案に即して検討する必要があるのだろう。
◯民事訴訟法
(釈明処分)
第151条 裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次に掲げる処分をすることができる。
一〜五 (略)
六 調査を嘱託すること。
(以下略)
(調査の嘱託)
第186条 裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる。