あかりの日記

おっ あっ 生きてえなあ

【民訴メモ】不法行為の損害の填補を受けた場合の充当計算

 

赤本に書いてあることをそのまま書くだけですが。(平成28年版上巻435頁参照のこと。)

 

問題の所在から。不法行為に基づく損害賠償請求について、保険金等が降りたときは、損益相殺として損害額から控除する。このとき、控除の充当関係は、あんまり拘らずに元本から控除して請求している人も多いらしいが、民法の原則からいくと、法定充当(民法491条1項)に従い、遅延損害金→元本の順に充当するのが正しい(最高裁平成16年12月20日)。そう考えた方が、被害者には有利になるな。

ところで、不法行為においては、弁護士費用も損害費目として請求できる。これは請求額の1割程度と認定されることが多いが、ここでいう請求額とは、過失相殺や損益相殺、損害の填補等を全て終えた後の金額を基礎にすると考えられている(過失相殺につき、最判昭和49年4月5日参照)。

そうすると、理論上は、損害賠償請求権は弁護士費用も含めて不法行為時に発生し、遅滞に陥っているはずなのに、弁護士費用の損害額を計算するには、その後の損害の填補による元本の減少まで考慮しないといけないことになる。ここで知りたいのは、理屈上それでいいのかではなく*1、損害の填補や弁護士費用の計算について、実務慣行上どう計算することになっているのかである。こういうのは理屈で考えても答えが出ないところがある。以下この点について検討する。

 

自賠責保険金による填補の場合、実務上、「弁護士費用を除く元本についての確定遅延損害金に先に充当して、元本額を確定する。その額の1割程度で弁護士費用を計算する。」という計算方法が取られている。なお、先充当の対象になる遅延損害金は、①元本総額に対する遅延損害金とする考え方と、②填補された額と同額の元本に対する遅延損害金のみとする考え方(最高裁平成11年10月26日等)の2通りがあるようだ。

具体例を使って計算してみよう。

弁護士費用除く損害金元本1000万円、遅延損害金利率年3分、不法行為日R5.1.1、R5.12.31に100万円の填補があったと考える。

①で計算すると、100万円の填補は1000万円に対する確定遅延損害金30万円に先に充当され、残り70万円が元本に充当されて、残元本は930万円。弁護士費用はこの1割で93万円。このように計算する結果、弁護士費用とそれ以外の元本では、遅延損害金の起算点がズレる。請求の趣旨の記載としては、「被告は、原告に対し、1023万円及びうち930万円に対する令和5年1月1日から、うち93万円に対する同年12月31日から各支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。」となる。

②で計算すると、100万円の填補は100万円に対する確定遅延損害金3万円に先に充当され、残り93万円が元本に充当されて、残元本は907万円。弁護士費用はこの1割で90万7000円。請求の趣旨の記載としては、「被告は、原告に対し、997万7000円及びうち907万円に対する令和5年1月1日から、うち90万7000円に対する同年12月31日から各支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。」となる。

 

うん。これさ、常に①の方が大きくなるよな。なんか②で請求するメリットあるんですか?

②は、填補が複数回にわたって行われた場合に、計算が容易になるというメリットがあるようだ。②なら、確定遅延損害金は填補額×不法行為日から填補日までの日数×利率で計算でき、常に各填補ごとに別々に計算できるが、①だと、確定遅延損害金は、各填補の時点での残元本を計算した上で、前の填補がされた時点から次の填補の日までの日数を数えて、計算しなければならない。①は、一つ前の状態が決まらないと次の状態が計算できない(漸化式的な?計算になる)わけだ。例えば、填補が10回とかあったとすると、かなり手間が違うことがわかるだろう。場面によって使い分けるのがよさそうだ。

 

ということなので、損害の填補があっても、とりあえず元本から引いて請求してるそこのあなた、本当はもうちょっと取れるかもしれないぞ。

 

*1:そもそも弁護士費用もきっちり1割にしないといけないわけではないので、理屈上もそんなにおかしくはないと思うが